営業時間 10:00〜18:00
【ニュース解説】事業再構築補助金6000万円返還命令に反発|ノースサファリが訴訟も視野に

はじめに
北海道札幌市の民間動物園「ノースサファリサッポロ」が、事業再構築補助金に関して国から6000万円の全額返還命令を受けたことが報道され、大きな注目を集めています。事業者はこの返還命令に対し「都市計画法違反にはあたらない」として返還に応じない姿勢を示しており、訴訟も視野に入れているとされています。
そもそもノースサファリサッポロは、2005年に札幌市南区の市街化調整区域内に無許可で開園した民間動物園であり、運営会社は20年以上にわたって、札幌市の行政指導に従わず施設の増設を続けてきました。施設の建設には都市計画法上の許可が必要ですが、これまで一度も許可を得ておらず、2023年の時点で園内の建物数は156棟に達していました。
こうした状況を受けて、札幌市は建物の全面撤去を命じる方針を示し、運営会社も撤去計画を提出。ノースサファリサッポロは2025年9月末での閉園を決定しています。
こうした経緯の中で、同園が受給していた事業再構築補助金についても、その適正性が問われる形となっています。
本コラムでは、この事例をもとに、補助金返還命令の背景と論点を詳しく解説し、制度的な意味合いを整理します。
ノースサファリの補助金採択と経緯
ノースサファリサッポロが受給していた補助金の概要は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
採択補助金 | 事業再構築補助金(第3回) |
事業名 | 動物園のワーケーション空間貸出事業 |
採択額 | 6,000万円(国)+750万円(札幌市) |
この補助金は、ノースサファリが市街化調整区域内において開発許可を得ずに施設整備を進めたことが発覚し、2025年7月23日付で国から全額返還命令が出されました。札幌市も国に連動し、750万円の返還を求める方針です。
国と事業者の主張の相違
報道によると、返還命令を巡る主張の対立は以下のように整理できます:
国の主張:
- 市街化調整区域での無許可開発は都市計画法違反。
- 補助金交付決定の根拠に重大な瑕疵があるため、交付決定を取り消し、全額返還を命令。
事業者の反論:
- 補助金で整備したトレーラーハウスは建築物ではない。
- よって都市計画法違反には当たらない。
- 補助金の返還には応じない意向。
- 訴訟により返還命令の取り消しを求める方針。
補助金返還命令の2つのパターン
補助金返還には、大きく分けて次の2つの類型があります。
1.交付決定取消(制度違反による全額返還)
- 虚偽申請、法令違反など、制度上重大な問題があると判断された場合。
- 補助金の交付決定自体が取り消され、受給した金額の全額返還が求められます。
2.補助事業の中止(残存簿価の返還)
- 補助事業の中止や目的外使用などで継続が困難になった場合。
- 補助金で取得した資産に対し、減価償却後の「未償却残高=残存簿価」の返還が求められます。
今回のノースサファリの事例では、事業の継続は困難な状況であるため、いずれのケースでも返還は発生する可能性が高いと言えます。ただし、その返還額には大きな差が生じます。
判断 | 結果 | 想定される返還額 |
---|---|---|
国の主張が認められた場合 | 交付決定取消 | 全額(6,000万円)返還 |
事業者の主張が認められた場合 | 補助事業の中止扱い | 残存簿価のみ返還 → トレーラーハウスのため返還額はごくわずか |
本件で重要なのは、ワーケーション事業で建物を新築した場合であれば多額の返還が発生しうるところ、今回はトレーラーハウスであったため、事業者の主張が認められれば返還額が最小限にとどまる可能性が高いという点です。
トレーラーハウスの耐用年数と返還額への影響
補助金で導入された資産の種類によって、返還額は大きく異なります。今回の事例では、以下の2種類の設備の比較が焦点になります。
設備の種別 | 法定耐用年数 | 残存簿価への影響 |
---|---|---|
RC構造の建物 | 30年以上 | 長期間にわたり償却が必要なため、返還額が高額になる可能性あり |
トレーラーハウス | 4年 | 採択から4年経過していれば、ほぼ償却済みで返還額はごくわずかになる見込み |
ノースサファリのケースでは、2021年と4年前に補助金採択を受けているため、トレーラーハウスの耐用年数が4年であることを考えると、すでに耐用年数の多くが経過しており、返還額はごくわずかになる可能性が高くなります。
今後の注目点と制度的意義
今回の事例は、以下の点で注目されています。
- コロナ禍の目玉補助金である事業再構築補助金が、ここまで注目される形で司法判断を仰ぐのは初めてです。
- 国と事業者が真っ向から対立し、補助金制度の解釈を巡って司法の場で争うのは極めて珍しいケースです。
このような制度解釈が裁判で問われることは、補助金制度の今後の運用方針や審査の在り方に影響を与える可能性があります。
続報を待ちつつ注目していきたいと思います。
関連リンク
ノースサファリサッポロ、国の補助金返還命令に応じず 取り消し求め提訴へ:北海道新聞デジタル
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1200138/
補助金申請をお考えの方は、経産省「認定支援機関」が運営する当センターへ、ぜひご相談ください
北海道補助金助成金サポートセンターでは、札幌市・苫小牧市・千歳市・恵庭市など道央地区や北海道内を中心に、自社での申請が難しい事業者に向けて各種補助金の申請サポートを行っています。
当センターを運営する株式会社OTisは、経済産業省から認定を受けた中小企業経営支援に関する認定支援機関(経営革新等支援機関)。補助金のプロが相談から申請・実績報告まで徹底サポートさせていただきます。
これまでも国や地方自治体の様々な補助金のサポート実績がありますので、支援をご希望の方や、自社でも使えるかなどご相談は、電話、公式LINE、お問合せフォームなどでご連絡ください。お待ちしています。
北海道補助金助成金サポートセンター
電話:050-3124-0901
営業時間:平日9:00~18:00
(お問合せフォームでのお問合せは24時間承ります)
ご相談・お問い合わせはこちら
ご相談・お問い合わせはこちら
■■■この記事の著者■■■
中小企業専門・補助金活用アドバイザー 矢農 誠
★経済産業省認定 経営革新等支援機関 株式会社OTis(オーティス) 経営支援室 室長/北海道補助金助成金サポートセンター センター長。
★国と北海道ローカルの補助金を得意とし、大型補助金のみならず大手コンサルが扱わない100万円単位の小規模な補助金もフォロー出来ることが強み。
★1979年生まれ、市議会議員→地場飲食店チェーン本部総務部長→現職。商工会議所認定ビジネス法務エキスパート、麻雀7段。
