営業時間 10:00〜18:00
【2025年10月】新事業進出補助金〈第1回〉採択結果を読み解く|全国の採択率・業種別分布と北海道29社の特徴

北海道補助金助成金サポートセンターです。
本コラムでは、北海道を中心とした中小企業経営者の皆さまに向けて、2025年度にスタートした「新事業進出補助金」、2025年10月1日に発表された第1回公募の採択結果を解説します。
全国の採択率や業種別の傾向を整理するとともに、北海道における29社の採択動向を詳しく見ていきます。
「次回(第2回公募)に向けて、どのように準備すべきか」のヒントにもしていただければ幸いです。
■ 新事業進出補助金とは?
「新事業進出補助金」は、これまでに取り組んだことのない新事業や新市場への挑戦を支援する補助金です。
事業再構築補助金の後継として2025年度から始まり、中小企業の前向きな投資と成長戦略を後押しする目的で設計されています。
補助金の特徴は以下の通りです。
- 補助率:1/2(対象経費の半分を補助)
- 上限額:従業員規模に応じ2,500万~7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円)
- 対象経費:機械装置費・システム構築費・建物費・広告宣伝費・クラウド利用料など幅広く対象
- 基本要件:
- 製品やサービスに「新規性」があること
- 新しい市場や顧客層に進出すること
- 付加価値額の向上や賃上げなどを伴う3~5年計画を策定すること
用語補足
- 新規性:既存事業の単なる延長ではなく、「新製品」や「新しい顧客層」を対象にした取組であること。
- 付加価値額:売上総利益+人件費+減価償却費。企業の“稼ぐ力”を測る指標です。
- 賃上げ特例:賃金水準を一定以上引き上げることで、補助上限額が増える仕組み。
■ 新事業進出補助金<第1回>採択結果の全体像
2025年10月1日に公表された新事業進出補助金<第1回>公募の採択結果は以下の通りです。
| 区分 | 応募数 | 採択数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 全国合計 | 3,006社 | 1,118社(うちトランプ関税加点590社) | 37.2% |
| 北海道全体 | 86社 | 29社 | 33.7% |
| └ 札幌市 | – | 13社 | – |
| └ 苫小牧市 | – | 0社 | – |
| └ 千歳市 | – | 0社 | – |
| └ 恵庭市 | – | 0社 | – |

■ 採択率37.2%~想定より高い結果をどう読むか?
今回の採択率は37.2%。一般に「採択率15%程度になるのでは」との見方もありましたが、実際には想定より高い結果となりました。
これは、補助金の公募が始まる前に、補助金事務局となる企業を選ぶための募集資料の中で示されていた想定数値に基づきます。そこでは「1回あたり申請件数は10,000件、採択1,500件(採択率15%程度)」と見込まれていました。
しかし、実際には申請件数が3,006件(想定の30%程度)にとどまったため、結果的に採択率は高めの37.2%となったのです。
背景には「新事業進出要件のハードルの高さ」があります。既存事業の延長では認められず、本当に新しい市場への挑戦が必要とされたため、申請できる事業者自体が限定されました。
その意味では、「応募できる会社にとっては比較的通りやすい」構造になったとも言えます。第2回以降も、新規性の定義と実効性ある計画の提出がカギになるでしょう。
■ 採択が目立った業種と、申請金額の相場感
第1回では、設備投資と新しい市場開拓の相性が良い業種が優位でした。特に、製造業/卸売・小売業/建設業の3分野での採択が目立ちます。ここでは「なぜ通りやすかったのか」を当センターなりに整理してみました。

1) 製造業(通りやすい理由)
- 強みを活かした新分野挑戦が描きやすい:既存の加工や品質管理の技術を土台に、半導体・医療・環境分野など、これまでと異なる市場へ進出するストーリーが作りやすい。
- 価格を上げられる根拠を説明しやすい:製品の仕様や素材を変える→単価を上げる→利益が増える、という流れを数字で説明できる。
- 第2回での工夫:「どこが新しいのか」「顧客がどう変わるのか」「価格はどう変わるのか」を整理して示すこと。
2) 卸売・小売業(通りやすい理由)
- 仕入れだけでなく、自社ブランドや製造に広げる計画が立てやすい。
- 新しいお客さんの開拓を説明しやすい:観光客、ネット販売(EC)、海外市場など、既存顧客と違う層に販売できることを示しやすい。
- 第2回での工夫:「仕入れ力」「自社ブランドづくり」「販路(ネットや観光)」をセットで説明。
3) 建設業(通りやすい理由)
- 建設+ものづくりの掛け算が新規性として認められやすい。例:住宅建設から木材家具の製造へ。
- 省人化・効率化の効果を数字で語りやすい:工期短縮、作業効率改善などで「生産性が上がる」と説明できる。
- 第2回での工夫:「どの工程が短縮されるか」「どのくらい人手が減るか」を数字で具体的に示す。
申請額の相場感
応募が多かったのは「2,000万〜2,500万円」の規模でした。
ただし「上限いっぱいを狙う」よりも、本当に必要な額を根拠と一緒に示すことが重要です。

■ 都道府県別の応募・採択の特徴
上位6都府県(東京・大阪・愛知・神奈川・福岡・静岡)で、全国の約半分を占める集中傾向が見られます。
個別に見ると、東京都 571応募/199採択(採択率約34.9%)、大阪府 313/118(約37.7%)、愛知県 208/83(約39.9%)、神奈川県 109/37(約33.9%)、福岡県 101/36(約35.6%)、静岡県 101/43(約42.6%)という結果です。

都市部は、企業数や支援機関が多いため応募も採択も件数が多くなります。
しかし地方でも、以下のような設計が「勝ち筋」として見られます。
- 地域資源を高付加価値化:農産物・水産物・木材などを「保存しやすく高単価で売れる商品」に加工。
- 観光やインバウンドとの連携:訪日客向けサービスや、オンライン販売で新しい顧客層を獲得。
- 業種をまたいだ新展開:例えば小売業が製造まで取り組み、利益を厚くする構造に。
つまり、地方でも地域資源や観光など外部環境を含めた強みを活かして「何を新しくするか」をはっきり示せば十分チャンスがあるということです。
■ 北海道の採択傾向は?— 29社の共通点から見える「勝ち筋」
北海道は応募86件/採択29件/採択率33.7%でした。件数は首都圏に比べ少ないですが、通りやすい“型”が見えてきます。
北海道の採択事例(抜粋・要約)
| 市区町村 | 業種 | 新規事業の方向性(要約) |
|---|---|---|
| 札幌市中央区 | 運輸 | 軽貨物向け運行管理システム(交通×IT) |
| 札幌市中央区 | 技術サービス | 余市ワインと観光拠点の開設(地域資源×観光) |
| 札幌市豊平区 | サービス業 | 訪日客と交通をつなぐDX配車(インバウンド×IT) |
| 北見市 | 製造 | 木材家具製造(地域資源×ものづくり) |
| 鹿部町 | 製造 | 水産物のレトルト食品化(水産×加工) |
| 余市町 | 宿泊・飲食 | ブドウのワイン醸造+観光体験(農産×観光) |
| 白老町 | 製造 | 食肉副産物の新商品化(地域資源×高付加価値) |
北海道の採択傾向から読み取れる「勝ち筋」
- 地域資源を高付加価値商品に変える
生鮮品をレトルト食品に、木材を家具に、といった「用途転換」で新しい商品と価格を生み出しています。 - 観光とセットにして新市場を開く
観光客向けサービスや、体験+物販の組み合わせで「新しい顧客層」に挑戦しています。
北海道でのまとめ
北海道の強みは、豊富な一次産業資源と観光ポテンシャルです。
地域資源を加工で高付加価値化し、観光やECで広く販売する、この流れが第2回以降も有効と考えられます。
■ 第2回公募に向けた準備のポイント
今回の採択結果から見えるのは、「本当に新しい挑戦を具体的に描けた会社が強い」ということです。逆に、既存事業の延長や投資理由があいまいな計画は通りにくい傾向があります。
第2回に挑戦を考える企業は、次の点を早めに進めると安心です。
- 新規性の確認:自社の計画が「新製品」「新市場」の定義に当てはまるかを整理する。
- 数字での裏付け:売上見込みやコスト削減効果など、客観的な根拠を準備する。
- 必要書類の早期準備:見積書、図面、契約書案など、提出必須の資料は時間がかかるため早めに動く。
- 認定支援機関との相談:計画の妥当性や新規性の整理は、認定支援機関と一緒に確認することで、採択の可能性が大きく高まります。
■ 第2回公募スケジュール(予定)
第2回公募の日程は以下の通りです。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年9月12日(金) |
| 申請受付開始 | 2025年11月10日(月) |
| 応募締切 | 2025年12月19日(金)18:00 |
| 採択発表 | 2026年3月頃(予定) |
第1回に比べ準備期間が短く、申請受付から締切まで約1か月と限られています。
そのため、事業計画の検討や必要書類の収集は今から動き出すことが重要です。
詳しくは下記のコラムで解説しています。
👉 【2025年度】新事業進出補助金〈第2回〉公募スケジュールと制度概要|第1回との変更点を詳しく解説
■ まとめ
「新事業進出補助金」は、単なる設備投資を支援する制度ではありません。
自社の強みを生かしながら、これまで踏み出せなかった市場に挑戦するための後押しをする補助金です。
第1回の結果からは、全国採択率37.2%、北海道採択率33.7%と、想定より高い水準での採択が確認されました。
その背景には、応募総数が当初の想定より少なかったこと、そして「挑戦できる企業にとっては狙いやすい制度」であることが見えてきます。
北海道では「地域資源の高付加価値化」「観光と結びつけた新市場開拓」が勝ち筋として浮かび上がっています。
これは第2回以降も引き続き有効な戦略になるでしょう。
参考リンク
補助金申請をお考えの方は、経産省「認定支援機関」が運営する当センターへ、ぜひご相談ください
北海道補助金助成金サポートセンターでは、札幌市・苫小牧市・千歳市・恵庭市など道央地区や北海道内を中心に、自社での申請が難しい事業者に向けて各種補助金の申請サポートを行っています。
当センターを運営する株式会社OTisは、経済産業省から認定を受けた中小企業経営支援に関する認定支援機関(経営革新等支援機関)。補助金のプロが相談から申請・実績報告まで徹底サポートさせていただきます。
これまでも国や地方自治体の様々な補助金のサポート実績がありますので、支援をご希望の方や、自社でも使えるかなどご相談は、電話、公式LINE、お問合せフォームなどでご連絡ください。お待ちしています。

北海道補助金助成金サポートセンター
電話:050-3124-0901
営業時間:平日9:00~18:00
(お問合せフォームでのお問合せは24時間承ります)
ご相談・お問い合わせはこちら
ご相談・お問い合わせはこちら
■■■この記事の著者■■■
中小企業専門・補助金活用アドバイザー 矢農 誠
★経済産業省認定 経営革新等支援機関 株式会社OTis(オーティス) 経営支援室 室長/北海道補助金助成金サポートセンター センター長。
★国と北海道ローカルの補助金を得意とし、大型補助金のみならず大手コンサルが扱わない100万円単位の小規模な補助金もフォロー出来ることが強み。
★1979年生まれ、市議会議員→地場飲食店チェーン本部総務部長→現職。商工会議所認定ビジネス法務エキスパート、麻雀7段。


コメント